「走れメロス」(太宰 治)
[紹介文]
妹の婚礼を終えると、村の牧人メロスはシラクスをめざして走った。
約束の三日目の日没までに暴虐の王のもとに戻らねば、
自分の代わりに友セリヌンティウスが殺される。
メロスは約束を果たすことができるだろうか。
陽はすでに傾いている。メロスよ、走れ!-
身命を懸けた友情の美しさを描いた表題作のほか、
「富嶽百景」「駆け込み訴え」「東京八景」など、
執筆活動の充実ぶりを示す、太宰中期の佳作九篇を収録。
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光村図書の中学2年国語の教科書に、「走れメロス」が掲載されている。
これは私自身も中学時代に国語で触れた作品である。
「邪知暴虐の王」に始まり、「竹馬の友」「車軸を流す」「獅子奮迅」、
「やんぬるかな」「言うにや及ぶ」「歔欷(きょき)」など、
真の中二病男子が使いたくなる言葉が飛び交う名作である。
なかでも、やはり「セリヌンティウス」は外せない。
一度口にしたら忘れられない語感。
少年時代に読んだ小説の登場人物で、
こんなにも明確に名前が出てくるのは
彼とぼくらシリーズの矢場勇くらいだ。
しかし、大人になってから読む直すと、
作品に対する印象は変わった。
当時、メロスもセリヌンティウスも
中学生の自分からすれば「大人」であった。
「大人」が友情のために約束を果たす姿は
本当にかっこよかった。
「走れ!メロス。」のあたりはぶるっと来たものだった。
しかし、今や彼らよりも歳を取っているかもしれない立場で
読み直してみると。
おいこらメロス。
仕事は出来ないくせに、口ばかり達者な
くそ生意気な新入社員のごとき振る舞いに
おいこらメロス。となる。
段取りせず単身王城に突っ込みその場で切り捨て御免。
なら本人の責任の範疇だが、
なぜ友を巻き込む??
そして、なぜ走らないのか??
※一般社団法人理数教育研究所
2013年度塩野直道賞を受賞した
愛知県の村田一真さんの「メロスの全力を検証」を御照覧あれ。
http://www.rimse.or.jp/research/past/pdf/1st/work03.pdf
「走れよ!メロス!」
村田さんは当時中学2年生。
疑問を突き詰めて解決していく姿勢は
メロスよりもずっと素晴らしい。