【読書感想言わない文】鹿の王

「鹿の王」(上橋 菜穂子)

 

学習塾の講師という仕事柄、

物事を分かりやすく伝えたいと思っているし、

そう出来るように日常的に心掛けている。

 

目にするもの耳にするものの中で、

「なるほど納得!」という説明に出会えば、

それを吸収しようとするし、

その機会を多く得られるようアンテナも張っている。

 

5歳になった長男からの質問に答えることは

本当に良いトレーニングになるし、

逆に彼の発言にはっとすることもしばしばある。

 

2歳の次男が、長男に「どうして雨が降るの?」と尋ねたとき、

彼は「雲が雨を抱えていて、それをばら撒くからだよ」と答えていた。

 

変に科学的な説明にこだわるより、

よっぽど相手に伝わるなあと感心した。

 

ロジカルに説明できることももちろん大事なことだが、

それが誰にでも通じるとは限らない。

 

伝える相手が誰なのか、どんな場なのか

その状況に応じて当意即妙に説明できる能力を

もっと磨いていきたい。

 

さて、「鹿の王」。

上橋菜穂子氏の小説のすごいところは、

ファンタジーなのにファンタジーっぽさを感じることなく

物語の世界に溶け込めてしまうところだと思う。

 

多分これは、彼女の構築した仮想世界の

「日常」の細やかな部分にまで

道理や由来などがさりげなく説明されていて

自分の「日常」の延長にあるような納得感で

満たされているからなのだろう。

 

おかげで「医療」が物語の柱となっているにも関わらず、

専門知識がなくともスッと入っていけた。

 

教師は「特定多数」の生徒に対して説明を尽くす仕事だが、

作家は「不特定多数」の読者に対して筆をふるう仕事だ。

 

 

その偉大な仕事に敬意を払いつつも、

あっという間に読み切ってしまうことを

許していただきたい。