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【読書感想言わない文】旅のラゴス

「旅のラゴス」(筒井 康隆)

 

私は一時期、旅をすることを仕事にしたことがある。

それは日本に住む外国人に会いに行く旅だ。

 

日本語は難しい。

これは国籍問わず、色んな外国人から聞こえてくる声だ。

 

まず、文字。

表音文字である「ひらがな」「カタカナ」だけでなく、

表意文字である「漢字」を覚えていかなければならない。

 

そして、文法。

英語など、語順が大きな意味を持つ文法体系と異なり、

助詞・助動詞の使い分けが決め手となる日本語を使いこなすことは、

ネイティブ日本人であっても難しい。

 

そこに、省略。

主語や目的語はもちろん、動詞すらも省略されることが多い。

日本語は「察してなんぼ」の言語なので、

話し手の意図をきっちり汲み取る為には

聞き手にかなり高度なスキルが必要になる。

 

極めつけが、遠慮。

なるべく自分の発言が周りに変な影響を与えないよう、

配慮に配慮を重ねた物言いとなることが多いので、

本音がどこにあるのか、

日本人同士でも汲み取れないことがある。

 

例えば

A「おなかすかない?」という呼びかけに対して、

B「何にする?」と応じたとする。

 

まず、Aの発言は、誰のお腹がすくのかが不明だ。

そして末尾は「ない」なので、否定なのか、質問なのか不明だ。

ただ、相手への呼びかけだし、おそらく質問なのだろう。

そしてBは、その質問に質問で返すという荒技に出る。

Aがお腹をすかせてきたことを察し、何を食べたいかを聞いたのだ。

しかも。お互い自分の主張はせず、まず相手への配慮。

ゆえの、質問だけでの会話が成立する。

 

外国人からしたら、

この会話は相当レベル高い。らしい。

 

さて、そんな摩訶不思議な日本語に輪を掛けて難解なのが

日本の法律や条例などのルールだ。

 

日本の自治体などから届く郵便物は、記述が細かく、

彼らには読めない、もしくは読めても意味が分からない部分が多いそうだ。

中には、自治体からの郵便物はすべて税金の徴収だ

と思って怖くて開けられないという人もいる。

 

いまはインターネット環境が整っているので、

母国のニュースは逐一入って来るが、

日本のニュース・情報はさっぱり分からん!という状況が

長年改善されずにいるのだ。

 

そこで、日本に住んでいる外国人の方々の為に

日本のニュース・情報を

彼らの母国語で書いた新聞を発行して

届けてあげようではないか!という会社が存在する。

そして、この新聞はやはり人気がある。

 

しかし、課題があった。

首都圏に住む外国人であれば、

こういった母国語の新聞を届けることはたやすいが、

地方に散っている外国人の手元にはそうはいかない。

 

そこで、我々は新聞会社と手を組み、

地方を旅しながら外国人を探しだし、

新聞の販路を開拓する仕事を始めたのだった。

 

成果が出なければ打ち切りとなるので

緊張感のある旅路ではあったが、

とても楽しかった。

 

自分の立てた企画、自分の商売だから

すべてが自分にかかっている。

だから、楽しかった。

 

この塾もそうだ。

だから楽しい。

 

 

さて、「旅のラゴス」(筒井康隆氏)であるが、

SF大家の筒井ならではの、設定のこまやかさに

読みながら感服してしまう。

そしてなによりも。「旅人」である主人公に

自分の人生を重ねて見てしまった。

 

自分の人生を振り返ったときに、

大きな旅、大きな冒険をしたな!と

笑いながら語れるようになりたい。