【読書感想言わない文】沈まぬ太陽

沈まぬ太陽」(一)~(五)(山崎 豊子)

 

[紹介文](一)より

広大なアフリカのサバンナで、巨象に狙いをさだめ、

猟銃を構える一人の男がいた。

恩地元、日本を代表する企業・国民航空社員。

エリートとして将来を嘱望されながら、

中近東からアフリカへと、内規を無視した「流刑」に

耐える日々は十年に及ぼうとしていた。

人命をあずかる企業の非情、

その不条理に不屈の闘いを挑んだ男の運命ー。

人間の真実を問う壮大なドラマが、いま幕を開ける!

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人が何かを習慣化するためにはおよそ66日間が必要となるそうだ。

もちろん、人によっても、何を習慣化するかによってもその差はあるが。

 

習慣化する上で必要となるコツは様々あるが、

私は「すぐに始められる状況を作っておくこと」と、

「簡単で良いから記録を残しておくこと」の2点が揃えば、

習慣化に持ち込める自信がついた。

 

家族(特に妻)からは不評だが、私は食卓に単語帳を載せている。

これは、単語の暗記を始めようと思えば

すぐに始められる状況を用意しているということだ。

 

すぐそばの壁にはカレンダーがあり、

そこには、どの部分の暗記を行うのかの予定が

一週間分書きこまれてある。

 

実行に移した日は、〇で囲むだけであるが、

(ごくたまに)実行しない日があるとすっきりしない。

 

確実に暗記が進んでいる実感が掴めてからは、

更に実力を伸ばしたいがために

もっと積極的に向き合えるようになった。

 

気付けば半年以上継続しており、

単語帳も早三周目に突入した。

まだ所々あいまいなものがあるので、

しらみつぶしの段階である。

 

 

さて、「沈まぬ太陽」。

これは日本航空の墜落事故の前後に焦点をあてた、

事実を基に小説的に再構築した物語である。

 

逆境においても挫けず、信念をもって突き進む主人公の姿に

勇気付けられる。

 

また、日航機墜落事故においても

遺族の方々の心情をすべて酌むことはもちろん不可能であるが、

筆者が可能な限り一つ一つ丁寧に掬い上げている姿勢が見受けられ

胸を打たれる。

 

もともと週刊新潮で5年に亘って連載されたものだが、

全編にわたって一度も熱量が落ちたところがなく、

徹底した取材と研究に裏打ちされた現実以上のリアリティに

圧倒される。

 

文庫5冊にまたがる大作。

読む側も熱量を持って一気に読み切ることをおすすめしたい。

 

 

「自分には習慣化は無理!」?

「66日間の継続なんて出来ない!」?

 

そんなことは絶対にない!

と思える作品である。

【読書感想言わない文】走れメロス

走れメロス」(太宰 治)

 

[紹介文]

妹の婚礼を終えると、村の牧人メロスはシラクスをめざして走った。

約束の三日目の日没までに暴虐の王のもとに戻らねば、

自分の代わりに友セリヌンティウスが殺される。

メロスは約束を果たすことができるだろうか。

陽はすでに傾いている。メロスよ、走れ!-

身命を懸けた友情の美しさを描いた表題作のほか、

富嶽百景」「駆け込み訴え」「東京八景」など、

執筆活動の充実ぶりを示す、太宰中期の佳作九篇を収録。

 

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光村図書の中学2年国語の教科書に、「走れメロス」が掲載されている。

これは私自身も中学時代に国語で触れた作品である。

 

「邪知暴虐の王」に始まり、「竹馬の友」「車軸を流す」「獅子奮迅」、

「やんぬるかな」「言うにや及ぶ」「歔欷(きょき)」など、

真の中二病男子が使いたくなる言葉が飛び交う名作である。

 

なかでも、やはり「セリヌンティウス」は外せない。

一度口にしたら忘れられない語感。

少年時代に読んだ小説の登場人物で、

こんなにも明確に名前が出てくるのは

彼とぼくらシリーズの矢場勇くらいだ。

 

しかし、大人になってから読む直すと、

作品に対する印象は変わった。

 

当時、メロスもセリヌンティウス

中学生の自分からすれば「大人」であった。

「大人」が友情のために約束を果たす姿は

本当にかっこよかった。

「走れ!メロス。」のあたりはぶるっと来たものだった。

 

しかし、今や彼らよりも歳を取っているかもしれない立場で

読み直してみると。

 

おいこらメロス。

 

仕事は出来ないくせに、口ばかり達者な

くそ生意気な新入社員のごとき振る舞いに

 

おいこらメロス。となる。

 

段取りせず単身王城に突っ込みその場で切り捨て御免。

なら本人の責任の範疇だが、

なぜ友を巻き込む??

 

そして、なぜ走らないのか??

 

一般社団法人理数教育研究所

2013年度塩野直道賞を受賞した

愛知県の村田一真さんの「メロスの全力を検証」を御照覧あれ。

http://www.rimse.or.jp/research/past/pdf/1st/work03.pdf

 

「走れよ!メロス!」

 

村田さんは当時中学2年生。

疑問を突き詰めて解決していく姿勢は

メロスよりもずっと素晴らしい。

【読書感想言わない文】荒神

荒神」(宮部 みゆき)

 

[紹介文]

時は元禄、東北の小藩の山村が、一夜にして壊滅した。

隣り合い、いがみ合う二藩の思惑が交錯する地で起きた厄災。

永津野藩主の側近を務める曽谷弾正の妹・朱音は、

村から逃げ延びた少年を助けるが、語られた真相は想像を絶するものだった…。

太平の世にあっても常に争いの火種を抱える人びと。

その人間が生み出した「悪」に対し、民草はいかに立ち向かうのか。

宮部みゆき時代小説の到達点。

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中学三年生が皆無事に卒業した。

3月中は高校数学入門の授業を週2回行っているので、

お別れ感がまだ湧いてこないけれど。

 

新しい環境に身を置き日々いろんな刺激があるはず。

良いことも悪いこともすべて経験となって

人生を支えてくれるはず。

思いっきり高校人生を楽しんでほしい。

 

さて、「荒神」。

いつものように内容については触れずにおくが、

それぞれ異なる立場や思惑をもつ登場人物が出会うことで

化学変化を起こし絶望的な窮地から立て直しを図る姿を描いている。

戦闘シーンは、緊張感とスピード感に溢れているが

でもそこは宮部みゆき、映像を見ているかのような描写力。

対立する二藩や人間関係、歴史を見事に編み込んでいて

「ここまで深く設計してんのかよ…」とため息が出る。

 

中でも利害関係や年齢を超えて団結する人間の姿は美しい。

 

これからは中学時代とは比べ物にならない程

人間関係に広がりが生まれるだろうけれど

その中で深くつながり一緒に何かを乗り越えていける

一生ものの仲間を見つけていってほしい。

【読書感想言わない文】羊と鋼の森

羊と鋼の森」(宮下 奈都)

 

[紹介文]

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、

調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。

ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。

個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、

調律の森へと深く分け入っていくー。

一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。

解説・佐藤多佳子

 

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人工知能の台頭により、

答えの出る問題を解くことや

答えの出る仕事をこなすことは

もはや人間のすることではなくなる。

そんな時代がやってくると世間は言う。

 

確かに、人工知能を引き合いに出さずとも

すでに機械化・自動化されて

人間のすることではなくなったものはたくさんある。

 

例えば、北海道函館への旅行をするとしよう。

交通手段として飛行機・新幹線いずれを選ぶにしろ、

窓口でチケットを求めるよりもネットで予約を済ます人が多いだろう。

電車であれば、改札で切符を通せば

料金不足で通過できない場合は自動で判断されるが

昔は駅員が一枚一枚に鋏を入れていた。

北海道に到着すればスマホで日本語・英語・中国語・韓国語で

お薦めスポットの情報を瞬時に手に入れられるし、

 美味しい食事は食べログぐるなびで検索できる。

もはやガイドの果たす役割もかなり限定的だ。

宿泊先もネットで予約を完結できるので、

予約受付の業務もだいぶ効率的になっている。

しかも、いずれも現金を使わずにカードなどで決算できる。

 

デジタルネイティブからみたら当たり前の世の中は、

一世紀前の人間が見たら腰を抜かすレベルである。

とくにここ十年、二十年の技術革新は

ドラゴンボールの戦闘力のハイパーインフレ

つい想起してしまう。

ヤムチャに活躍の場はないのだ。

 

答えの出る問題や仕事をこなせない人間であれば

厳しい状況に追いやられるのは間違いないのだろう。

 

では、どうするか。

 

勉強するしかないだろう。

 

飛行機を飛ばすのも新幹線を走らせるのも

ネット決済のシステムもマルチリンガルシステムも

この社会を支えているテクノロジーの根源は

これまでの人類の英知を引き継ぎ発展したものであり

消費者はその先端部分を享受している。

 

そこには絶えず創造と革新があった。

そしてその裏には、

誰かの為にと心の底から思いやる人がいて、

できると信じて千や万の失敗を繰り返してもめげない人がいて、

思いがけないところから閃きを得た人がいて。

 

何もコンピュータと計算勝負をする必要はなく、

AIには出来ないことを創り出すために

勉強を重ねていくしかない。

 

羊と鋼の森」は調律師を主人公とした物語である。

調律は単に音の高さを整えるだけではなく

「明るい音」とか「くっきりした音」とか、

ピアニストが求めている音を作っていかなければならない、

答えのないところに答えを出していく仕事だ。

 

さらに、ピアノの個体差、湿度や温度、会場によっても音が変わる。

 

自分の思い描く音をつくり出すことができる職人がいれば

ピアニストにとって、なくてはならない相棒になるのだろう。

 

この仕事は、AIや機械ではできない。

 

そして、この主人公のように

「これだ」といった仕事に出会い、

何を差し置いても没頭してしまう人間こそが

豊かな社会をつくり出してきたのだろう。

 

生徒のみんなにも、どうかそんな出会いがあってほしいし

そのためにも勉強を続けてほしい。

【読書感想言わない文】さよならドビュッシー

「さよならドビュッシー」(中山 七里)

 

[紹介文] 

ピアニストからも絶賛!

ドビュッシーの調べにのせて贈る、音楽ミステリー。

ピアニストを目指す遥、16歳。

祖父と従姉妹とともに火事に遭い、ひとりだけ生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負う。

それでもピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。

ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生するー。

第8回『このミス』大賞受賞作品。

 

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さて神奈川県公立高校入試の合否が出て、早一週間。

当塾では厳しめの面接特訓をした成果か、

面接点が90点を超える子もかなり出たこともあって

不利な状況から合格に漕ぎつけた生徒がたくさんいる。

 

一方で残念ながら、不合格者も出てしまった。

一生懸命頑張っていた。

我々も個別で指導したりもして思いも一入だったので

今回の結果はとても悲しい。

合格者を出すことが前提の仕事なので、

プロとしてとても悔しい。

願わくば、併願で入学した高校で

今以上に頑張り、進路を輝かせてほしい。

 

本書は、大火傷を負った主人公の

挫折・絶望から再生までの道のりが描かれているが、

コンクールへ向けた気迫はすさまじい。 

(もちろんミステリーである以上、一筋縄ではいかない。

中山七里氏のすごさを存分に味わってもらいたい。)

 

どんな状況からだって、夢を追うことはできる。

進んだ高校で人生が決まる訳ではない。

だから、これから自分を輝かせるためにもう一度頑張ってほしい。

 

俺は一年前にこの本に出会って、

そのときの自分では到底弾けない難度のピアノ曲

毎日少しずつ少しずつ弾けるようにしていって、

ついには弾けるようになった。

この歳であっても、何度失敗しても

何度も乗り越えていけば目標に到達できるんだと

そういう風に思えるようになったよ。

 

だから、もう一度夢に向かって頑張ってほしい。

 

満点道場はいつでも味方だから、

困ったときには遠慮なくおいで。

【読書感想言わない文】十二国記

十二国記シリーズ」(小野 不由美)

(「魔性の子」~「黄昏の岸 暁の天」※シリーズ未完)

 

数学や物理などの成績を上げる為には

国語の勉強をするのが近道だと聞いたことがある。

 

現代国語を読み解く上で

論理的に物事を捉える力は必要不可欠だし

数学を始めとする理系科目のほとんどが

論理的思考力を要するからだ。

 

という側面もあるが、

実はこれだけではない。

 

数式とは記号であり、

記号とは抽象化されたものである。

この抽象的な概念に対して想像力を働かせ

具体的な事案に結びつけていく能力がなければ

計算問題は解けても、文章題は解けるようにはならない。

 

では想像力を磨く方法とは何か。

 

それは、読書なのだそうだ。

 

目で捉えた文字情報を脳内でイメージをすることが

良いトレーニングになるのだそうだ。

 

しかもこの想像力とは、

トレーニングを積めば積むほど広がりを見せ

難解な文章をも瞬時に把握するまで高めることができるそうだ。

 

これは聞きかじりなので正確な情報がどこにあるのかは知らないが、

イエール大学などの学生の中には

年間で1000冊~3000冊読むような猛者がゴロゴロいるそうだ。

 

読書量=学力というような乱暴なことは言わないが、

確かに読書好きの生徒で勉強が苦手という子は見かけない。

 

願わくば、学校教育の中で

「読書を強制する」ことだけは避けてもらいたい。

強制されれば苦痛になり、苦痛は読書から足を遠ざける。

 

もっと気楽に、ただ楽しんでもらいたい。

 

だから言う。

小野不由美氏の「十二国記」を読め!と。

 

壮大な世界観に、緻密な描写。

国を統べる者の苦悩、それを取り巻く者の思惑。

ファンタジーならではの、非現実的な設定も不自然に感じられない。

 

最初の3巻を読み切れば、

すっかり設定を理解できるので

その後はページを捲る手が止まらなくなるはず。

 

十二国記シリーズ〉

魔性の子

月の影 影の海 上

月の影 影の海 下

風の海 迷宮の岸

東の海神 西の滄海

風の万里 黎明の空 上

風の万里 黎明の空 下

丕緒の鳥

図南の翼

華胥の幽夢

黄昏の岸 暁の天

 

このシリーズはまだ未完であるが、

次作が最終巻となる。

 

小野不由美氏の体調が全快されることを

心より願う。

【読書感想言わない文】神の子

「神の子」(薬丸 岳)

公立高校入試も終わり、
この土日は中1、2の学年末対策で
朝から大勢の生徒でごった返している。

もう少し広ければ良いんだけどね、
ごめんよ。

さて「神の子」。
これは知能指数160超という設定の
超天才が主人公である。

冒頭は、主人公がある犯罪組織で
振り込め詐欺のシナリオ作成を担当し
その知能を発揮。というシーン。

その後の展開は、いつものように伏せるが、
別世界・別次元の「天才」の
人間として成長していく様を丁寧に描写しており、
素直に応援したくなるところは、
他の天才を扱う小説とは異なる。

知能が高くとも、
それを何に向けて使うか、
そして誰と進んでいくかで、
「孤高」となるか「孤独」になるかが
決まるのだろう。

勉強を、周りの子に
懇切丁寧に教えてあげている生徒を見て、
この子はきっと良き人生を歩むんだろうなと
しみじみ思った。