【読書感想言わない文】鹿の王

「鹿の王」(上橋 菜穂子)

 

学習塾の講師という仕事柄、

物事を分かりやすく伝えたいと思っているし、

そう出来るように日常的に心掛けている。

 

目にするもの耳にするものの中で、

「なるほど納得!」という説明に出会えば、

それを吸収しようとするし、

その機会を多く得られるようアンテナも張っている。

 

5歳になった長男からの質問に答えることは

本当に良いトレーニングになるし、

逆に彼の発言にはっとすることもしばしばある。

 

2歳の次男が、長男に「どうして雨が降るの?」と尋ねたとき、

彼は「雲が雨を抱えていて、それをばら撒くからだよ」と答えていた。

 

変に科学的な説明にこだわるより、

よっぽど相手に伝わるなあと感心した。

 

ロジカルに説明できることももちろん大事なことだが、

それが誰にでも通じるとは限らない。

 

伝える相手が誰なのか、どんな場なのか

その状況に応じて当意即妙に説明できる能力を

もっと磨いていきたい。

 

さて、「鹿の王」。

上橋菜穂子氏の小説のすごいところは、

ファンタジーなのにファンタジーっぽさを感じることなく

物語の世界に溶け込めてしまうところだと思う。

 

多分これは、彼女の構築した仮想世界の

「日常」の細やかな部分にまで

道理や由来などがさりげなく説明されていて

自分の「日常」の延長にあるような納得感で

満たされているからなのだろう。

 

おかげで「医療」が物語の柱となっているにも関わらず、

専門知識がなくともスッと入っていけた。

 

教師は「特定多数」の生徒に対して説明を尽くす仕事だが、

作家は「不特定多数」の読者に対して筆をふるう仕事だ。

 

 

その偉大な仕事に敬意を払いつつも、

あっという間に読み切ってしまうことを

許していただきたい。

 

【読書感想言わない文】図書館の魔女 烏の伝言

「図書館の魔女 烏の伝言」(高田大介)

 

 

筋トレを始める上で

ダンベルを購入する方も多いと思う。

 

そして、マメに筋トレを続けていると、

あっという間に購入したダンベルの最大重量を

持ち上げられるようになってしまうものである。

 

そうなってくると、負荷が物足りなくなり

筋肉の発達も伸び悩むものである。

 

ここで、21レップ法というものを試すと、

思っていた以上に刺激が加わったことを感じる。

 

21レップ法とは簡単に言うと以下のようなものである。

◆筋肉を一番縮めたときを0、

 一番伸ばしたときを100として

①100~50を7回

②50~0を7回

③100~0を7回

以上合計21回行う。

 

最初は自分が扱える最大重量ではなく、

ずっと軽めの設定で試してみるといい。

マンネリから抜け出せると思う。

 

さて、高田大介氏の2作目となる「図書館の魔女 烏の伝言」であるが、

前作に続き、本当に読み応えのある作品だった。

 

作中カタカナを一切使わずに、

美しい日本語で肌理細やかに世界を表現しきる

その圧倒的な語彙力とセンスにため息が出る。

 

また、人物一人ひとりの性格や言葉遣い、

これまでたどってきた人生・背景からにじみ出る雰囲気まで、

徹底した人物設計を行っていることが伺える。

こうなると、もうブレない。

登場人物同士が見事な化学反応を起こし、

丁々発止の会話が物語に鮮やかな色を添える。

 

難解な言葉も多く、

渦巻く陰謀のあれこれが同時並行的に進むので、

小説を読みなれていない人は少し疲れてしまうかもしれない。

が、クライマックスに向けた後半の怒涛の展開は

期待を裏切らないので頑張ってほしい。

 

活字中毒気味で、

刺激が物足りなくなっている方にも、

マンネリから抜け出せるのでおススメだ。

【読書感想言わない文】風が強く吹いている

「風が強く吹いている」(三浦しをん

 

この時期になると、受験生の中には

死に物狂いで勉強をする生徒が出てくる。

そういう生徒は、周りをいい意味で刺激してくれるので

我々としては大変ありがたい。

 

勉強時間に比例して成績が上がる、

というほど世の中は甘くないが、

圧倒的な勉強量をこなしてきた生徒が

その後も成績が変わらないなんて例は

見たことがない。

 

一日や二日、半日以上勉強したところで

その程度の努力であれば誰にでもできるが、

これをひと夏続けてこれを継続できれば

ライバルは絞られてくる。

 

さて、「風が強く吹いている」(三浦しをん)は、

箱根駅伝をテーマにした物語である。

 

作中、残された短い時間の中で

効率よく走力を上げるためのメニューを

取り組んでいるシーンがある。

 

が、

 

効率よくとは言いながらも、

各人のレベルに合わせてかなりの練習量をこなしている。

 

「効率よく」とは、練習量を削るためのものではなく

本番を想定して、必要とされるスキルを磨くための

「工夫」を指すのだろう。

 

勉強量を確保した上で、

今の自分に必要なものは何か、

足りないものは何かを考えて、

工夫を重ねて効率も上げてほしい。

【読書感想言わない文】午後からはワニ日和

「午後からはワニ日和」(似鳥 鶏)

 

夏期講習が始まった。

学校が休みになると、起床時間が遅くなる生徒が多い。

いつもより多く眠りたい気持ちはよく分かるし、

そんな日がたまにはあってもよいとも思っているが、

基本的には、いつも通りの時間に起きるべきだ。

 

君たちに言いたいことは2つ。

 

①成長ホルモンの恩恵を受けるべし。

以前は成長ホルモンはゴールデンタイム(22時~02時頃)に

多く分泌されると言われていたが、最近の研究によると、

成長ホルモンは特定の時間に分泌されるという訳ではなく、

入眠後最初の3時間に多く分泌されることが分かってきたそうだ。

しかし、眠りの深さよって分泌される量が変わってくるため、

最初の3時間で深い眠りにつけるようにしなければならない。

睡眠ホルモンが減少してくる03時~05時以降は眠りが浅くなるので、

その前に3時間を確保しようとなれば、00時までの入眠が必要となる。

 

遅く起きた日は、やはり遅くまで起きてしまうものだ。

十代の前半で、身も心も大きく成長するこの時期に、

成長ホルモンの恩恵を受けないなんて、勿体無いにも程がある。

 

②時間のコントロールをするべし。

学校の通常授業が無いとは言え、部活や友達付き合い、

塾やその他の習い事、それに加え夏ならではのイベントもあり、

大人から見ても多忙だと思う。

中学時代の夏休みはエンジョイするべきだし、

同時に未来への投資=勉強も一生懸命するべきだ。

睡眠時間も含め、あらゆるスケジュールをコントロール

これらを両立させ充実させてほしい。

 

さて、「午後からはワニ日和」(似鳥 鶏)であるが、

これはある動物園から狂暴なイリエワニが盗まれ、

飼育員である主人公が解決に乗り出すという話だ。

 

超個性的な飼育員がぞろぞろと出てきて、

彼らの掛け合いを読むだけでも面白いが、

個人的にはあまり馴染みのない「動物園の飼育員」の日常を

垣間見ることができる点が良かった。

 

彼らは動物とともに生きている人々だから、朝は早い。

出産の立ち合いや看病などが発生すれば泊りがけで対応する。

命を預かる仕事というものは、やはりタフでなければ務まらない。

 

主に自分のためだけに時間を使えるときは、

せめて自分の世話は一生懸命するべきだよ。

 

【読書感想言わない文】ブレイブ・ストーリー

ブレイブ・ストーリー」(宮部みゆき

 

間もなく暑くて熱い夏がやって来る。

 

以前、職場の上司が朝礼で

「暑いから、寒いからと言って

成果に影響があって良いわけがない。」

と営業部員たちに話していた。

 

仕事は仕事。

やるべきことはやってあたりまえ。

それをやり切らないことに対して、

外に理由を求めてはいけない。

 

本当にその通りだと思う。

 

気温によって体調を崩したり、

天気によって行動に制限が出たりして、

本来のパフォーマンスが出せないことも

それは自分の管理や工夫が足りないことが原因であると反省し

同じ過ちを繰り返さないようにすべきだ。

 

さて「ブレイブ・ストーリー」であるが、

これは小学5年生の主人公が幻界を旅する物語である。

先入観を持ってほしくないので、作品の内容には触れないが、

日本一印税を稼ぐ女流作家の異次元の腕力に振り回されて

本を閉じたときには一緒に長い旅に出たかのような

心地よい疲れを感じた。

小中学生にはおすすめの本である。

 

タイトルにもあるように、本当の意味での「勇気」とは何か

それを読者に問いかけているように感じる。

 

自分の人生を自分で切り開いていくこと。

それは自分の人生の責任を背負うことでもあり、

他者に責任を転嫁しない心の強さを持つことでもある。

 

失敗を恐れない勇気。

失敗を他者のせいにしない勇気。

失敗から立ち上がる勇気。

そしてそこから未来に向けて前進していく勇気。

 

塾生にはアツい夏期講習を

勇気をもって乗り越えてほしい。

 

【読書感想言わない文】本日は、お日柄もよく

「本日は、お日柄もよく」(原田 マハ)

 

前期中間試験も終わり、

三年生は修学旅行もあって、

ほんわかふんわりした雰囲気が漂う

今日この頃。

 

メリハリ大事だからね。

テスト明けに鬱憤を晴らすのは良いことだけど。

もう一度言うけど、

メリハリ大事だからね。

テスト明けでも勉強するときは集中して勉強しろよ。

 

さて「本日は、お日柄もよく」(原田マハ)だが、

これはスピーチに焦点を当てた異色の小説である。

 

人に聞いてもらえるスピーチ、

人の心を動かすスピーチをするには

どうしたらよいのか。

 

そんなスピーチに関するイロハが

随所に織り込まれていて、

人前で話すことを仕事とする自分としては、

自己啓発本としての価値も十分にあった。

 

ただし、この小説の面白いところは

スピーチを軸にしながら

徐徐に日本を動かすようなスケールの大きな話と

発展していくダイナミックさにある。

 

一所懸命、

何かを究めた人は

それがどんな分野であれ

必要としてくれる人が必ず現れる。

 

そう感じさせてくれる本だ。

 

中学生にもオススメ。

【読書感想言わない文】ジェノサイド

「ジェノサイド」(高野 和明)

 

光陰矢のごとし。

新学期が始まったと思ったら

すぐそこまで前期中間試験が迫ってきている。

と感じている生徒も多いと思う。

 

一方で着実に試験対策を進めている生徒もいる。

 

この違いは、未来に対する想像力の違いと言えるかもしれない。

 

年間行事予定表に掲載されている各定期試験の日程を見る。

自分の成績を具体的にどの程度上げたいのか目標を決め、

試験でどの程度の成果を残すべきなのかを考える。

試験の日程から逆算し、

いつまでにどの程度の実力を付ける必要があるのか。

実際に勉強に充てられる時間はどの程度なのか、

試験前後で提出すべきものがあるならば計画的に備え、

直前になって「提出のための作業」の発生を防ぐ。

 

などなど、試験に向けて様々な角度から想像をめぐらす。

 

そして現状と理想とが乖離しているならば

必死に差を埋める行動を取る。

 

そういうことが出来る子は、やはり強い。

 

無論、これが出来る生徒は少ないことは分かっている。

少ないから、我々も日々メッセージを送り続けるし、

出来る生徒のやり方やペースを真似していく中で

成長していって欲しい。

 

さて、「ジェノサイド」(高野 和明)。

ジェノサイドとは「大量殺戮」の意味であり物騒なタイトルである。

 

この小説には、人類滅亡を引き起こす可能性のあるシナリオを考察し、

それをまとめたレポートが出てくるのだが、

この内容が非常に興味深い。

 

未来に対する想像力が桁外れである。

 

 

人間と他の動物とで決定的に違う部分の一つは、

様々な「未来」を想像できるということだろう。

過去の失敗や経験から、それを未来に活かす程度のことは

他の動物でもできる。

ただしゼロから思考・想像を重ねて、それを実現させていくことは

他の動物には真似が出来ない。(はず。)

 

未来を想像できない以前に、

失敗からも学べないようでは、

半人前と言われて当然である。